第一次/第二次派遣さん戦争とそして誰もいなくなった
これだけ働き方改革が叫ばれているのに、どうして労働問題は無くならないのでしょうか。
「派遣切り」
この単語が一時ニュースで何度も報道されていたことは、ゆとり世代の僕でさえ印象に残っています。(いつだったかは正確には覚えてませんが)
工場で2年間勤務した後、僕は異動となり、都会にやってきました。
そしてその時は知るよしもありませんでした。
まさか、自分が、ドロドロの労働問題、人呼んで「第一次/第二次派遣さん戦争」に巻き込まれることを。
第一次派遣さん戦争
僕が今の部署に異動となった時、すでに派遣さん(Aさんとします)が働いていました。
Aさんは僕に対して非常にフレンドリーな方でした。
Aさんは子供が幼稚園児であり、夫が単身赴任中であったため、時短勤務でありました。(いわゆるワンオペ育児です。)
うちの部署はコミュニケーションが少なく、業務も皆さん、淡々とこなされます。
雑談等は基本ありません。。。
そんな中、Aさんも当初、業務のやり方を誰かに聞くことも出来ず、苦労したようです。
基本自分で他部署の担当者に聴きながら仕事を覚えたようです。
そして、端的に言うと、Aさんはこのことを非常に根に持っていました、、、
正直僕も、もう少し管理職の方々が気を遣っても良いのではないかと思ったくらいです。(必要最低限のレベルの気遣いでさえ無かったように感じます。)
Aさんからしても来たばかりでまだ若い僕には話がしやすかったのでしょう。
聞く限りでは、派遣だと給料も高いわけではないため、やはり正社員になりたいという想いは強かったようでした。
そして僕が工場から異動して半年後、業務に慣れて来た、そんな時、
突然Aさんの退職が決まりました。
課長と面談をしたときに、その遅刻や休みの多さなどについて指摘されたようです。
たしかに指摘された内容は事実ですが、お子さんの病気等が主な理由であり、仕方ない部分が多くありました。(僕はAさんのお子さんの身体が強くなく、風邪などを引きやすいことを知っていました。もちろんAさんが休むときは事前に会社に連絡していました。)
さらに、Aさんの業務遂行能力自体には全く問題はなく、Aさんが休むことによって業務に支障が出たことは今まで一度もありませんでした。月次の繁忙期は絶対に休まなかったですし、そもそも時短勤務前提で採用されてますしね。
僕の印象では、時短勤務でお子さんも小さいのにかなり頑張っているな、という印象でした。
しかし、残念ながら、課長は、Aさんが普段どのような業務をしているのか(Aさんが何をいつまでにしなければならないのか)について、あまり詳しく知りませんでした。
というかあまり知ろうとしていなかったです。
そのため、Aさんの頑張りをきちんと評価することなく、休みが多いということだけを捉えて、このような話となってしまいました。
そして、Aさんの派遣会社もうちの人事部と繋がっている(というかその派遣会社は子会社)ため、結局Aさんは「自己都合退職」ということにされました。
Aさん自身はこのことに対して全く納得できていませんでしたが、正社員になるという目標もあったため、すぐに転職活動をスタートさせ、実際能力も高い人だったので、すぐに正社員として採用されました。
しかし、推測ですが、この時点でAさんの課長、および派遣会社に対する憎悪は凄まじいものがあったと思います、、
Aさんは課長との面談後、次の派遣さんが来て業務に慣れるまでの間、契約を1ヶ月延長して、今の職場にいてくれないかと言われたようですが、さすがにこれには腹が立ったのかこの提案を固辞し、その月の月末には止めることになりました。やめろと言っておきながら、会社の都合で1カ月だけ延長とは何事か、と。Aさんからしたらそういうことです。
Aさんは不憫でしたが、ここまでは、僕にあまり実害はなかったのでした…
(Aさんの愚痴は散々聞きましたが…)
第二次派遣さん戦争
Aさんの代わりとなるべく新しい派遣さんがやってきました。これをBさんとします。
Aさんが辞めるまで、あと3週間もなかったため、引き継ぎは急ピッチとなりました。
しかしこの引き継ぎが問題でした。
かつてAさんが入社したとき、Aさん自体もろくな引き継ぎを受けることができなく、そのことを(現在の課長含めて)当時誰も指摘しなかったようです。この話が出る前から、Aさんはそのことに憤りを感じていたのです。
これに加え、理不尽な形で「自己都合退職」させられたAさんには、当然、Bさんにきっちりと引き継ぎをするモチベーションなどあるはずがありませんでした。
実際、引き継ぎの仕方は、最初の数日間、そこまで丁寧なものではありませんでした。
しかしこれに対して、
Bさんがクレームをいれました。
課長は派遣会社を通してAさんの引き継ぎの仕方の問題点をAさんに指摘。
これに対してAさんがブチギレメールを展開するなど、それ以降はもうドロドロの状況でした。
自分(Aさん)のときは見て見ぬ振りをしてきたくせになんなんだ、と。
そういうことでした。
そのような指摘もあってか、引き継ぎ自体はすぐに改善がなされました。
しかし、BさんのAさんへの疑念は薄まらず、業務終了時間となると、決まって僕が会議室によばれ、ほほ毎日1時間ほど、Bさんの話を聞かなければなりませんでした。
そのほとんどがAさんに対する愚痴でありました。この時点で、Aさんの引き継ぎの仕方は問題ないレベルまで改善していたのにもかかわらず、です。
僕もこのタイミングで辞められると困る立場であったですし、これは単にAさんとBさんの相性の問題だと思ったので、根気強く話を聞き続けました。
今考えると、もともとBさん自体のメンタルが弱く、いわゆる「かまってちゃん」系の方だったんだと思います。
小学校とか中学校のときにいたかまってちゃん系の女子が、そのまま40代になってしまったような感じですね、、
Aさんの引き継ぎは改善していました。
僕含め今回は周りの人も積極的にサポートもしていましたし、やってもらう業務も派遣労働の範囲内でなおかつ簡単にできることしか任せていません。
でも、Bさんは、結局会社に来なくなり、なんと、2週間で辞めてしまいました。
そして、Aさんの業務は残り3日で全て僕が引き継ぐことになりました。
そして誰もいなくなりました。
若手社員も派遣さんの業務範囲を知っておきましょう
Aさんが辞めることが決定してからも、僕はAさんと共に仕事をする必要がありました。
Aさんは、自分の後任のポジションの求人が掲載されているのを発見したようで、僕にそれを見せてくれました。
それを見てすぐに僕は気付きました。
Aさんの業務が、求人内容を超えていたことに。
でもそういう個別の契約内容の部分は、僕ら平社員が知る由はないわけじゃないですか。
だから、派遣さんの業務管理は、実際に契約内容を知っている管理職の方々がしっかりとすべきだと思います。
Aさんは、他部署の担当者から直接仕事を投げられ、それに対応したりもしていました。(管理職は知らんぷり。というか興味なし。また派遣会社もまともに対応してくれなかったようです…。)
契約以外の業務を派遣さんにやらせると何が起きるのでしょうか。
www.pasona.co.jp
派遣契約を締結する際には、具体的な派遣業務内容、派遣期間・時間などを定めなければならず(法第26条)、また、派遣法は派遣先に対して「派遣契約の定めに反することのないように適切な措置」を講じるよう義務づけています(法第39条)。
したがいまして、派遣先が派遣労働者に指揮命令を行い、就業させることができるのは、あくまでも派遣契約で定められた業務内容の範囲であり、契約業務以外の仕事を派遣先が命ずることはできません。
また、派遣先が派遣労働者と直接協議し、派遣契約の条件変更や、終了するような手続きをとると、派遣先が、本来は権限のない、雇用主が行うべき行為を行うことになり、結果、派遣労働者との間でトラブルが発生することにつながりますので、やむを得ない事情がある場合は、できるだけ早く派遣元に相談して下さい。
今回の場合、「派遣先」というのは僕がいまいる会社のことです。「派遣元」というのがAさんやBさんを送り込んできた派遣会社のことですね。
今回の派遣さん戦争において、2つのタブーが破られてしまったことにお気づきでしょうか?
1.契約業務以外の仕事を命ずることはできません。
2.契約内容の変更や契約の終了は、派遣さんと直接交渉せず、派遣会社に相談しましょう。
詳しくはここでは控えますが、Aさんの業務は多分契約内容を超えちゃってました。
そもそも管理職がAさんの業務内容を知らないという状況は、契約がしっかりと履行されてるか確認していないのと同意です。
また、僕の部署では、管理職から直接派遣さんに契約の終了に関する交渉をしてしまっています。
派遣さんの契約周りに関する交渉は、派遣会社を通しましょう。自分達で解決しようとしてはいけません。大揉めすることになります。(本件のように。)
派遣の二極化
今回すぐ辞めてしまったBさんについてですが、これが派遣人材の闇の部分ではないかと思います。
Bさんは名の知れた大企業の派遣さんとして何年か業務をやってきたようで、そのことに自負があったようでした。僕も社名を本人からききましたが、誰もが知るような大企業でした。
僕の会社では、もう何年も前から単純労働は派遣に切り替えようという方針でやっています。こういう会社は他にも多いはずです。
しかし、派遣のままでいると、結局単純労働しかできない人間になってしまいます。
余談ですが、派遣労働の専門用語の中で、政令28業務と自由化業務、というものがあります。
政令28業務とは、専門的な知識や技能を必要とする業務のことです。国によって、28種類が定められています。自由化業務とは、これ以外の業務です。
派遣労働法の歴史を辿ると、派遣労働というものは、本来、専門的な技術を持った人を短期間で雇用して、実力を発揮してもらおうとするものだったらしいです。
これが、そうでない部分に対しても、派遣として仕事してほしい/仕事したい、という企業と労働者、両者のニーズにより、自由化業務という定義ができたみたいです。
国としては、専門的な能力を持たない人が、派遣さんとして長く働き続けると、40代、50代になって、何かのけっかけで企業を辞めざるを得なくなったときに、どこからも採用されず、路頭に迷ってしまう、ということがありますよね。
よって、あまり派遣を長くすることは問題です。国はこれを危惧して法改正してますからね。
繰り返しますが、
Bさんは名の知れた大企業の派遣さんとして何年か業務をやってきたようでした。
「前の会社は違った」
そういう風に何度も言われました。
ただ、こちらとしては、そこまで難しいことを任せているわけでもないですし、サポートもしているわけなので、そんなこといちいち言われても困るわけです。
Bさんは今回、すぐ辞めてしまいましたけど、これからは派遣さんの二極化が進むと思います。
1つはAさんパターン。
Aさんは、色々ありましたが、結局最終的には正社員となることができました。法律も、能力のある派遣さんを正社員にする方向で整備が進んでいるようです。
能力のある派遣さんは、なんだかんだ正社員として働く方向に世の中としてはなっていくような気がします。
もう1つはBさんパターンです。
職場があわないから、とか、周りが優しくないから、とか、そういう理由で会社をすぐ辞めます。
すぐ辞めると能力もつかない上に、正社員になることもできません。
というか、このような人たちの場合、正社員になるモチベーションも特にはなかったりします。
このようにして、派遣として単純労働に従事して、すぐ辞めて、を繰り返すと、履歴書にした時に明らかに印象悪いですよね。
まあ、この好景気(2019年現在)なので、今いる会社の派遣をすぐ辞めても次がすぐ見つかるのかもしれないですけど。
ただ、仕事をあまりにも選り好みしていると、後で痛い目にあうと思います。
周りから信用されないですし、何より自分のためになりません。
こうして信用もされない、特段能力もない派遣さんが生まれ、別の会社に移って同じサイクルを繰り返すのです。
オリンピックが終わって不景気が来たときとかに派遣業界はどうなるんでしょうかね。
サイクルが繰り返されているうちはいいのでしょうけど、いつまでも続くとは正直思えません。これだけAIが叫ばれている時代でもありますので。
こういった意味では、Aさんは業務を任されすぎていましたし(かつ短時間でそれをこなす能力もあった)、Bさんは業務を選り好みすぎていました。
この辺のコントロールなんでしょうね。
とにかく派遣さんといえど反旗を翻されると本当に大変なので、不用意な行動は慎みましょう。
何かあったら必ず派遣会社を通すことです。
ほんと、みなさん気をつけてください。
派遣も正社員も置かれてる立場は一緒でしょ
国としては、専門的な能力を持たない人が、派遣さんとして長く働き続けると、40代、50代になって、何かのけっかけで企業を辞めざるを得なくなったときに、どこからも採用されず、路頭に迷ってしまう、ということがありますよね。
この「派遣さん」の部分、「会社員」に変えても意味通じますよね。
意外とこの先の運命は派遣さんと条件変わらないのかもですね。
せめて若い人に迷惑をかけるような40代にならないように。
本件は反面教師にさせていただきます。
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