メーカー経理マン雑記

学生時代には経理になるなんて全く考えてなかった人のブログ。経理の実態、就活などについて思うこと書きます。

「経理はAIによって10年後にはなくなる」は本当か?ゆとり世代現役経理マンが本気で考察してみた。

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経理経験がない方は、「経理は将来なくなっていくんだろうなぁー」と漠然としたイメージをお持ちではないでしょうか?

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僕も大学生の時には、そう思ってました。

 

AIが台頭してきたら、「単に計算処理をする」役割である経理は必要ないんじゃね?と。

 

この時は、経理に特に興味もなかったし、深く考えることはしませんでした。

 

そしてその数年後、僕は経理に配属となりました。

 

経理として働く間にも、経理の未来について、語られる記事を何件か見てきました。

 

そんな僕が経理の未来に関して、考察します。

 

 

会計事務職員はこの数年で激減した

以下の記事をみても分かるように、会計に関わる人達の人員はここ数年間で激減しました。

 

会計事務職が100万人分も減少──この15年で増えた仕事、減った仕事|メンズファッション、時計、高級車、男のための最新情報|GQ JAPAN

 

「会計事務従事者」の減少数は下から2番目です。

 

もっとも多くの就業者がいなくなったのが、この分野の人達なのです。

 

経理も、もちろん、この中に含まれてくるはずです。

 

この理由の一つに、会計システムの導入があると言われます。

 

僕も会社に入って、経理として働いてからわかりましたが、会計システムは日々進化しています。

 

使い手の要望に合わせて、システムも、もとろん一部的ではありますが、修正がリアルタイムで行われており、なるべく使用者の負担を減らすことが考えられています。

 

これはある意味当然のことです。そうでなければ、会計システムを提供する側の優位性はなくなるのですから。

 

そして、1990年代後半からこの十数年間で、会計システム自体も、相当安価になったと聞きます。

 

会計システムを導入するハードルが低くなったことと、会計システム自体の進化が、この会計事務員大リストラ現象を産んだ要因の一つと言えそうです。

 

このようにして、経理の単純作業やルーティンは、会計システムに代替されるようになりました。

 

それは、人もいなくなるわけです。

 

さて、昨今叫ばれる「AI 」は、経理業務にどのような影響を与えるのでしょうか。

 

 

「A I」と経理の歴史

「A I」とは「人工知能」のことです。

 

これが、経理のルーティンを削減し、経理を大幅縮小に追い込むとまことしやかに囁かれています。

 

では、現在において、AIはどのような経理業務のどのような分野で活躍できるのでしょうか?

 

 

実は、パッと思いつくものは少ないはずです。

 

ここで、経理の歴史に大きなインパクトを与えたであろういくつかの事象について、考えてみます。

 

1つ目は、電卓の登場です。

 

その昔、経理の人たち(「経理」と呼ばれていたかはわかりませんが)は、経営に必要な計算を手計算で行う必要があったはずです。

 

そこに、電卓が導入されたときの衝撃を想像できるでしょうか?

 

電卓は、扱うのが非常に簡単です。

 

少し慣れれば誰でも使えるモノです。

 

そして、手計算と比較して、圧倒的に短時間で、かつ正確に計算結果を算出することができます。

 

電卓が経理業務に与えた影響は大きかったはずです。

 

2つ目はExcelの登場です。

 

Excelが台頭し始めたのは、Windows95が発売され始めた頃からと聞きます。

 

つまり、1995年頃から、といったところでしょうか。

 

Excelの機能は当時、革新的であったに違いありません。

 

まず、関数を使用して、複雑な計算を一瞬で完了することができます。

 

今となっては、毎月、作業としては、数字を変えるだけで、算出してくれるような仕組みをExcelで作ることは、少し勉強すれば難しくないですが、電卓しかなかった頃には、その都度電卓を叩いて計算をしていたはずです。

 

そして、Excelの機能として便利な点は、単純ですが、クリック操作で簡単に「線を引くこと」ができることにもあります。

 

請求書や、各種帳票について、電卓の時は、手書きで表を書いていたのです。

 

僕も昔の帳票を見たことがありますが、全て手書きです。

 

原価の推移を示したグラフを見たことがありますが、方眼紙に手書きでプロットし、線で結んで折れ線グラフにしていました。何十年か前の資料です。

 

このように、経理の仕事は単に計算をするだけではなく、その数字を見える化したり、関係先にきちんとしたフォーマットで送付したりする必要があったりと、多岐に渡っています。

 

さて、ここで、3つ目に、AIの登場を考えて見ましょう。

 

 

経理業務とAIの問題点

AIは、2018年7月現在すでに台頭しつつありますが、残念ながらそれが即座に経理業務の仕事に影響を与えるかといいうと、そうではなさそうです。

 

まず、AIの導入の仕方を考えるのが難しいのです。業務に入ってくるとしたら、人の業務を「少し」楽にするような形で入ってくるのが現実的かと思います。

 

例えば、債権債務の消込などは、それほど知能を必要としないので、簡単に消せるものはAIに消してもらって、消せないものだけフラグをたてて残して貰う、などといったことが考えられます。

 

(「消込」とは、自社の売掛金と、相手会社からの入金金額を照合する作業のことです。これがないと、入金されても、それがなんの取引によるものかわからず、売掛金が残ったままとなってしまいます。)

 

以上のことから、AIは、おそらく、Excelほどのインパクトを与えないことが考えられます。

 

会計システムが発達した現代においても、会計システムにExcelを読み込んで伝票起票したり、データを加工(グラフや表の作成など)するときには、会計システムからデータをエクスポートして、Excelに落としてきます。

 

この方が作業がしやすいからです。

 

このように、Excelというものは、経理業務の基本的なところまで入り込んでいます。

 

対して、AIは、Excelと比較したときに、活用方法が難しいということがあります。

 

ちなみにExcelの機能には、単に四則演算や線を引いたりするだけでなく、各種関数や、ピボットテーブル、マクロといった便利なものが含まれています。

 

しかし、残念ながら、このような機能の全てを使いこなせている人は(もっというならば、これを勉強してモノにしようという人さえも)多くはないのが現実です。

 

Excelでさえ使いこなせないのに、AIの機能についていける人がどれだけいるのでしょうか。

 

もちろん、AIの導入方法によっては、扱いが難しくないものもあると思いますが、人間というのは基本的に学習しない生き物(だと僕は思ってます笑)なので、便利な機能があっても、扱うのが難しいと、それほど普及しないということが十分考えられます。

 

また、経理業務の中に切っても切り離せないものに「例外処理」の存在があります。

 

例えば、社内ルールでは、相手会社への支払いは、伝票起票してから、5日後、と決まっていたとします。

 

でも、どうしてもすぐに相手会社に入金しなければならない、といったことが起こり得ます。

 

このような事態に、AIだけでは対応できないでしょう。

 

経理は、例外処理なくして語れません。

 

僕も工場にいたとき、例外処理の対応をしたことがありますが、仕訳を自分達で考えて、会計システムが狂わないように、処理に乗せる必要がありました。

 

このような処理は、どうしても、人が介在しないと難しいでしょう。

 

以上のことから、AIにとって不得手といわれる部分もあると考えられるのです。

 

 

「いつ」経理はなくなるのか

AIが経理業務に入り込んでくるにあたって、いくつかの障害があることがわかりました。

 

では、経理がなくなるのはいつなのでしょうか。

 

経理業務は、企業規模の拡大とともに、業務が増えていきます。

 

上場したら、監査対応が必要になります。

海外進出したら、国際会計基準に対応しなければなりません。

 

逆に捉えると、縮小する企業の経理というのは、基本的にルーティンが多いはずで、新たな業務も増えないはずなので、理論上、仕事をどんどん効率化していくことができるはずです。(やるかどうは別として)

 

これまで述べてきたように、このようなルーティンの多い分野に、AIは強いはずです。

 

思うに、会計事務員が激減した理由の一つに、失われた20年といわれる日本全体の停滞の中で、経費削減が叫ばれ、その中で、「ルーティンを回す」経理の存在意義も薄れてしまった、という要因があるのではないでしょうか。

 

本来であれば、不況の時こそ「管理」が必要です。

 

なぜなら、経理という生き物は、その性質上、基本的に数字に現れる提案、「黒字」になるような提案しかしないからです。

 

ところが、僕も入社して気づきましたが、このような提案を、この年功序列の日本社会で行い、存在意義を見出していくことは、大変難しいのです。

 

もちろん、日本社会だけではないのかも知れませんが。

 

企業が縮小、あるいは市場が成熟し、急成長が見込めない場合には、ルーティンを回すだけの経理は、AIがあろうとなかろうと、淘汰されるのではないかという風には思います。

 

高度経済成長を経て、人口減少の段階に入った日本の企業は、多くの大企業でこの段階に突入しているはずですから。

 

これから経理を目指そうという学生の方々、および経理職への転職を考えている方は、今までの経理(=単に計算をするだけの経理)からの脱却をしなければ、今後は生き残っていけないであろうことを、必ず頭の隅に置いておく必要があるはずです。

 

ただ、この一方で、2018年現在においても、単なる計算役としての経理からの脱却をされた方々が、世の中にはいるはずです。

 

このような人たちを、今後も「経理」と呼ぶのであれば、「経理」はいなくならないと思います。

 

 

経理」の定義

ここで、経理の定義について、考えてみます。

 

経理は将来なくなる」と、言われはするもののその定義はそもそもなんなのか?ということです。

 

一般に、「経理」と思われてるものとはなんなのでしょうか。

 

経理を経験したことがないと、

社会人であったとしても、

 

「いつも会社にいてパソコンをカタカタしてる人達」

 

という印象しかないのではないでしょうか。笑

 

経理の語源は「経営管理」ですが、数字関連にまつわる取りまとめの部署、といったほうがわかりやすいかと思います。

 

この数字関連の取りまとめには、決算や社外公表資料のもととなる資料の作成(財務会計)と、販売戦略にひもづく数字(商品をどこにどのタイミングでどれだけ売れば良いか、など)の数値の管理(管理会計)と、大きく2つに区分できます。

 

経理の定義自体は、この2つで大きく変わることはないと思いますが、経理の歴史の中で、経理に必要な力というものは、変化してきています。

 

例えば、電卓がなかった頃には、

計算が正確に早くできて、誰の目からもわかる綺麗な数字を描く人が評価されたはずです。

 

電卓が登場した頃には、

グラフを正確に書けたり、大量の計算を電卓で正確に早くこなすことができるタフな人が好まれたかも知れません。

 

Excelが登場した現在では、

関数や、ピボットテーブル、マクロなどといった機能を用いて仕事をできる人が、経理でも、やはり評価されます。

 

経理の定義および求められる役割(=財務会計管理会計)は長らく大きくは変わりませんが、必要とされる能力(=評価基準)は、各種ツール(電卓、Excelなど)の登場で大きく変化しています。

 

単に数字が綺麗で、計算が早いだけの人が、Excelのある現代で評価されるとはとても思えません。

 

したがって、AIの登場によって、経理が必要とされる能力は、今後変化していく可能性があります。

 

そのような中で、もしかしたら、多くの人のイメージの中にいきる、単なる計算役としての経理は、いなくなるかもしれませんね。

 

 

AIと経理の未来

今後、AIの登場によって、か、よらずかは、わかりませんが、経理の求められる役割は少なからず変わっていくことでしょう。

 

現在は、Excelや会計システムが非常に発達しています。これらを使いこなせなくてもできる経理の仕事はたくさんありますが、個人として能力を進化させなければ、いきなり首を切られる可能性は十分にあります。

 

そんな未来の経理として、生き残る術は大きく2つあるかなと、個人的には考えています。

 

1.AIやシステムを使いこなし、喰われる側から喰う側になる。

 

2.管理会計などのAIが入り込みにくい分野で専門性を持つ。

 

1に関しては、AIの推進を自分の手で行なってしまおうというものです。

 

Excelでさえ、その機能を十分に使いこなせていない人がたくさんいる現在です。

 

会計分野のAIに詳しくなれば、さらに言えば、AI導入プロジェクトに携わるような経験などがあれば、他の経理と差別化を図ることができるはずです。

 

このように、AIを用いた経理業務の削減にみずから関わっていくのがこの1のポジショニングです。

 

当然ながら、Excelや会計システムの知識も身につけていく必要があると思います。

 

2に関しては、簡単にいうと、AIとは関係のない分野で頑張るということです。

 

特に管理会計の世界は、企業戦略と密接に関わってくるため、大事な役割でもあります。

 

経理財務特化の転職エージェントと前に面談したことがありましたが、その人も、今後は管理会計をできる人が重宝されるようになると言っていました。

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なぜなら、財務会計の仕事は、どの企業でもやることは基本的に変わらないため、どんどんアウトソース(外注)する傾向にあるためらしいです。

 

そして、そのような流れの中でも企業に残るのは、企業戦略と密接に関係しているために、外注することのできない管理会計の部隊だということでした。

 

特に海外の企業ではその流れができつつあり、これからの財務屋は辛い思いをするのではないか、と言っていました。

 

ただ、大企業に勤めるとわかると思いますが、結局意思決定をするのも年功序列であるため、単なる計算役から脱却して、利益として数字になるような提案ができる、という環境に身を置くこと自体が、残念ながら困難なものとなってしまっている部分は、否定できません。

 

このような経理を目指せるかどうかは組織風土や、その時の役職によるものも多い気はします。

 

 

まとめ

以上より、経理の役割は今後も大きくは変わらないはずですが、もとめられる能力は変化していくはず、というのが結論です。

 

また高度経済成長が終わり人口減少社会となった日本では、AIがあろうとなかろうと、経理の役割も変わる可能性があります。

 

変われなければ生き残れないのは、今に始まったことではありませんし、経理だけではないはずです。

 

なくなるか、なくならないかを論じる前に、経理なら、自分のスキルを磨いて変化していくというのが、大事なことかもしれませんね。

 

▼「AI経理」という本を参考にさせていただきました。

今後の経理に関することがたくさん書かれています。

興味のある方は是非よんでみてください!!

 

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